モンテッソーリ流「叱る」を徹底解説! 「伝える」具体的な声かけも紹介
「言うことを聞かない」「約束を守らない」「しっかりとしつけなければ!」など、さまざまな理由から、こどもの叱り方について悩むことがあるのではないでしょうか? 国語辞典で「叱る」を調べると、「目下の者に対して欠点を指摘したり、咎めたりすること」とあります。モンテッソーリ教育では、こどもも人格を持った一人の人間であるため、こどもと大人が互いに尊重し合える関係性を築くことを大切にしています。そのため、目下の者に対して行う「叱る」という行為は必要ないということがわかります。そして、「叱る」よりも感情的な「怒る」行為も同じことが言えます。しかし、「叱る」「怒る」をせずに、甘やかしてOKというわけではありません。では、「叱る」「怒る」をどのようにしていけばいいのか、詳しく解説していきます。
「怒る」と「叱る」の違いについての記事はこちら
「叱る」から「伝える」に切り替える
「叱る」から「伝える」に切り替えることの必要性についてお話します。
「叱られるからやめる」は、根本解決になっていない
「こぼさないでって言ったでしょ」「片付けないと怒るよ」などと「叱る」声かけをしていると、「叱られたくないからやめる」という外発的動機によってやらなくなることはあると思います。しかし、それは「どうやったらこぼれないか」「どうやって片づけるか」などの根本的な解決法がわかっているわけではないので、根本解決にはならず、結局、同じことをくり返し叱っていくという負の連鎖になるのです。それは「褒められたいからやる」にも同じことが言えます。「叱られたくないからやめる」ではなく、「こうしたほうがいいからやめる」に変えていく必要があります。
「怖い」「叱られた」の印象が強く、内容が残らない
叱られている時、こどもは「怖い」「叱られている」ということばかりにフォーカスしてしまい、何をしてはいけないのか、どうすればいいのかなど、本来の内容が頭に入ってこないことがあります。そのため、感情的になったり、咎めるような言い方をしたりすることは、こどもにとってあまり意味がありません。例えば、スーパーの中で走り回るこどもに対して「走らないでって言っているでしょ!いい加減にしなさい!」と言われたこどもは、「叱られた」と記憶するだけで、なぜ叱られたかは理解していません。そのため、次にスーパーに行った時も同じ行動をする可能性があります。「ここはお買い物をするところで、たくさん人がいるから、お母さんの横で一緒に歩いて欲しいんだ」と、伝えるようにしたほうが、こどもは自分がどうすればいいかを理解することができます。
何がいけなかったかを理解することが最重要
恐らく「叱る」ことの目的は、何がいけなかったか、どうすると良いのかをこどもが理解することですよね。そのため、「伝える」かかわりでは、こどもが理解できるよう具体的な内容を伝えていく必要があります。「叱る」声かけでは、「いい加減にして」「早くして」「何回も言ってるでしょ」など、抽象度の高い声かけが多くなりがちです。それを「ここでは歩こうね」「両手で持てばこぼさないよ」「あと3回で終わりにしよう」などと、こどもでも理解できるような伝え方にしていきましょう。このようなかかわりをくり返すことで、こどもの行動に変化が見られるでしょう。
このように、目下の者に対して欠点を指摘する「叱る」を、こどもを尊重した「伝える」に変えていくことは、こどもの人格形成にも大きく影響を及ぼします。大人がこどもの育ちを助け、尊重することは、自尊感情や自己肯定感などの目に見えない力となり、こどもの発達を大きく後押ししていきます。
絶対にしてはいけないことをした時、どのようにかかわる?
「叱る」を「伝える」に切り替えていく必要がありますが、以下の2つ場面では、しっかりと線引きをした上で伝えていく必要があります。
場面① 自分、他人、物に危害を及ぼす(叩く、噛む、蹴る、物を投げる・落とすなど)
叩いている手や蹴っている足を大人が身体を使って制して
「蹴ることはやってはいけません。〇〇を使いたかったんだよね。そういう時は『かして』って言うんだよ。一緒に言ってみようか?」
場面② 自分の身が危ない(道に飛び出すなど、ケガをしそうなシチュエーション)
大人の身体を使ってこどもの身体をホールドして
「高いところにのぼることはやってはいけないことだよ。〇〇ちゃんものぼってみたくなったのね。でもここは危ないから、おりようね」
以上のように、大人の身体を使ってこどもの行動を制止させ、わかりやすく、具体的&端的に伝えていくことが大切です。
「叱る」→「伝える」具体的な声かけ例を紹介!
どのように伝えるのが効果的なのか、ありがちなシチュエーションごとに声かけ例を紹介していきます。
もし、感情的になってしまった時に試したいこと
どんなに「伝える」ことを心がけていても、時に感情的になってしまうことがあると思います。そんな時は以下のようなことを試してみてください。
これらを試しても気持ちが落ち着かなかったり、考える隙もなく叱ってしまうこともあるかもしれません。感情のままに気持ちを伝えてしまうのと、上から厳しく叱るのは別の行動です。そのため、もし感情的になってしまった時は、気持ちが落ち着いた時に「お母さん、さっき強く言ってしまったけど、こう伝えればよかったよね。ごめんね」と素直に気持ちを伝えるようにしましょう。こどもの育ちに必要なのは「伝える」かかわりです。
つい脅してしまうという方にはこちらの記事がおすすめです。
まとめ
「しっかりしつけなくてはいけない」「間違いを正さなければ」と思えば思うほど、「叱る」かかわりになってしまいがちですよね。しかし、本来の目的は「こどもに伝える」ということ。「叱る」かかわりになるあまり、大切な「伝えたいこと」がこどもに届かないことがあります。具体的&端的に「伝える」かかわりで、こどもの自己肯定感や自尊感情を育てていけたらいいですね。
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出版社勤務を経て、出産を機にフリーランスに。育児書や児童書、Webメディアなど、ママパパ向けの媒体での執筆がメイン。7歳と11歳の娘の母。