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モンテッソーリ教育は社会性が育まれないって本当?

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モンテッソーリ教育について、「集団行動をしないから社会性を身につけられなそう」「自由教育だからわがままに育つのでは?」などという声を耳にすることがあります。または、「早期教育」「英才教育」と思われている方もいるかもしれません。今回は、モンテッソーリ教育が考える社会性について、お話をしていきます。

そもそもモンテッソーリ教育とは?

モンテッソーリ教育の園

イタリアの女性医師、マリア・モンテッソーリが、当時発達に遅れがあるとされるこどもを観察する中で「教育」の重要性を感じたことから始まった教育法。「こどもには自らを発達させる力(自己教育力)がある」と考え、「こどもを尊重して信じる」ことを基盤として、理論や方法が築き上げられているのです。

モンテッソーリ教育が大切にしていること
  • 「自立・自律」に向かうこどもの育ちを助ける
  • こどもを観察してこどもの欲求を知る
  • こどもを一人の人間として対等に捉える
  • 環境を通してこどもの発達を助ける
  • 教師は「ガイド」としてサポートする役割 など

本当の「社会性」ってどんなこと?モンテッソーリ教育は何が違う?

植物に水やりをする子ども

突然ですが、「社会性」と聞いて皆さんはどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?

  • 人と協力する力
  • コミュニケーション能力
  • 自分の思いを表現する力

このようなイメージを思い浮かべる方が多いのではないかと思います。

こどもに求める社会性でよく言われているのは、「先生の言うことを聞く」「お友達とケンカをせずに仲良くする」「困っている子がいたら助けてあげる」などが挙げられますよね。

では、その社会性を身につけさせたいと思う理由には、どのようなものがあるのでしょうか。「こどものことを自由にさせるとわがままになるから」「言う事を聞いて行動できるようになってほしいから」「集団生活で苦労しないために」などが理由として想定されます。

しかし、実は乳幼児期においては、「大人から強制された社会性」ではなく、「自分の中で育んでいく社会性」が必要なのです。本当は嫌だと思っているのに大人に言われたから玩具を貸してあげる、言う事を聞かないと怒られてしまうから言う事を聞くなどといった「見せかけの社会性」ではなく、その行動の必要性を理解して、自発的に起きる行動こそが大切なのです。

「大人が思う社会性」と「目指すべき社会性」のギャップ

親子

一般的な幼児教育では、「今使っているおもちゃを貸したくない」「まだお絵描きを続けたい」など、こども自身の選択や意志があっても、先生の言う通りにしなくてはいけない「絶対」の場面が多くあります。このようなこどもが「NO」と言えない環境の中では、従うことしかできません。この時にいくら従っていても、それは目指すべき社会性が育まれているわけでも、協調性があるわけでもないのです。一見できていても先ほどもあった通り、主体性のある行動というよりは、「そうするしかないから」「怒られてしまうから」という外発的な動機が大きく影響している可能性があります。

よく、「集団生活をスムーズに送るために社会性を身につける」などと言うことがありますが、集団はあくまでも「個(人)」が集まってできているグループのことを言います。人格形成をしていく中でもとっても重要な乳幼児期。その時期に、何でも「人に合わせる」「自分の感情に関係なく人に優しくすることを強制される」状況では、なかなか社会性は身につきません。

では、どうするといいのでしょうか。それは、人生の初期である乳幼児期に、まずは「個=自分」をしっかり育むこと。「個=自分」が確立されているからこそ、その「個(人)」が 集まって互いの主体的な社会性を発揮し合って、調和のあるグループを成すことができるのです。

砂場で遊ぶこども

そのため、乳幼児期は、自分がやりたいことを「自己選択」することがとても大切であり、「NO」と言いたい時は言っていいということを学ぶ時期。時にはお友達と揉めることや、我慢しなくてはいけない場面も出てくると思います。それを闇雲にやめさせるのではなく、自分と相手との思いがぶつかった時に、「自分の気持ち」「相手の気持ち」などを感じ、「どのように解決しよう?」と考える力こそ、この時期に身につけたい力なのです。

大人はそれをできるだけ見守り、時に導いてあげることが大切です。そのような経験を重ねていく中で、こどもは学習し、「個=自分」を育んでいくことができます。そして、「このおもちゃは私の!」とお友達に言っていた子が、「終わったら貸してね」などと、次第に言えるようになっていくのです。そして、「個」が満たされると、他の人に目が向くようになり、お友達を助けてあげることができるようになります。

大人に置き換えて考えても、自分にストレスがない時は、人にやさしくすることができますよね。それはこどもも同じなのです。そのため、大人が「絶対」を与えなくても、こどもの内側から真の社会性は出てくるものだと言えます。

モンテッソーリ教育の社会性へのアプローチ

モンテッソーリ教育の園

では、モンテッソーリ教育では、どのようにこどもの社会性を育んでいくのでしょうか。ここからは、モンテッソーリ教育の中でされている社会性へのアプローチをいくつかご紹介します。

縦割り教育

モンテッソーリ園

赤ちゃんから大人になるまでの間、こどもたちはいくつかの発達段階を経ていきます。心身発達の特徴はこの発達段階によって異なるため、こどもが過ごす環境は、各発達段階に応じた適切なものである必要があります。モンテッソーリ教育のクラス編成はこの考え方に基づいており、各クラスとも複数の年齢グループで構成された異年齢クラスになっているのが特徴です。こどもたちは異年齢間で互いに助け合い、学び合って過ごします。同じ年齢だと競い合ってしまったり、教える・教えられるの中でプライドが傷ついてしまったりすることもありますが、異年齢だとスムーズに助け合うことができます。

自由が保障された環境

ひも通し

こどもによってどんなことに興味があるかは異なります。はさみで紙を切るのが好きな子、クッキングをするのが好きな子、数の活動が好きな子。モンテッソーリ教育の中では、教師が「これをやりなさい」と決めるのではなく、こども自身がその時にやりたいことをやりたいだけできる環境が用意されています。このように「自己選択」と「自由」が保障されていますが、この「自由」は何でもやっていいというやりたい放題ではありません。やってもいいこと、いけないことがはっきりと制限としてある中での自由が保障されています。

各活動は基本1つだけ

ピンクタワー

普段の活動のことをモンテッソーリ教育では「お仕事」と呼んでいます。成長の段階に合わせたお仕事があります。例えば、こどもが感覚的に大きさを区別できるお仕事、はさみで切るお仕事、お花をいけるお仕事など、発達に合わせて幅広い活動があります。そして、それらのお仕事は例えどんなに人気だったとしても、基本的には1つずつしかありません。そのため、使いたいタイミングがかぶった場合、話し合いをしたり、譲り合いをしたりしながら使うことを学んでいきます。環境の中に「待つ」ことが仕組み化されているのです。

自分、友達、環境を尊重する

水やり

こどもが自分の好きなことを自ら選んで活動することにより、集中しやすくなり、こどもは満足感を味わうことができます。そのような経験の積み重ねが自己肯定感の育みや自分には価値があると思える有能感に繋がっていきます。そうして「個=自分」が満たされることにより、次第に周りにいるお友達への気遣いができるようになるのです。そして、お仕事を通じて「机やいすを整える」「植物に水をあげる」「掃除をする」など、環境に気を配ることができるようになり、環境への尊重もできるようになっていきます。

気品と礼儀を学ぶロールプレイ

こどもと大人

乳幼児期のこどもにとって、「挨拶をしなさい」「ありがとうと言うのよ」と、言葉で説明するよりも、大人がお手本を示すことの方がより吸収しやすくなります。そのため、大人が気持ちの良い挨拶をしたり、円滑なコミュニケーションを取ったり、気品のある仕草をしたりする姿を見せることが大切です。お仕事をする中で、目で見た大人の行動をロールプレイしながら、気品や礼儀を学んでいきます

このような取り組みから得られること

ここまでモンテッソーリ教育の社会性へのアプローチを読まれてどのように感じられたでしょうか?モンテッソーリ教育の目指す社会性は「大人から強制された社会性」ではなく、「自分の中で育んでいく社会性」です。そのため、このように日々の生活のなかでこどもが経験できるよう、忍耐強くサポートしていきます。

以下のようなマリア・モンテッソーリの言葉があります。

「このような社会意識は教えることによって身につけさせたものではありません。いかなる競争意識あるいは個人的利害とも完全に無縁です」

モンテッソーリ教育では、こどもの個を育み、強制ではなく、自らの内側から社会性が出てくることを大切にしています。

家庭でできるモンテッソーリ教育

家族

モンテッソーリ教育の社会性へのアプローチを知り、モンテッソーリ教育の園に通わないと叶わないのだろうか?と悲しまれた方もいらっしゃるかもしれません。安心してください!園に通わなくても、おうちで意識してかかわりをを取り入れることができます。これからいくつかご紹介しますので、ぜひ実践してみてください!

社会性のために家庭でできること
  • こどもが自己選択できるようにする
  • こどもの「いや」という気持ちをまずは聞き、できることとできないことに一貫性をもつ
  • こどもが「やりたい」と言ったことを大切にする
  • 家事に参加できるようにし、「家族の一員」という気持ちを育む
  • 異年齢のこどもと遊ぶ機会をもつ
  • 言葉遣いや立ち振舞をロールプレイングする
  • 家庭でのルールをつくる

このように家庭でできることはたくさんあります。まずはこどもの「やりたい」という主体性を大切にしながら、「個=自分」が育まれるのを助けていくのがおすすめです。その上で、徐々に周りや環境にも関心が向くよう、ルールを決めながら、一緒に生活を営み、家庭や家族にこどもが何か貢献できるチャンスをつくるのもとてもよいですね。ぜひ気軽にできそうなことから取り入れてみて下さい!

まとめ

子ども
モンテッソーリ流 社会性を育むポイント
  • 乳幼児期は「個=自分」を育むことが大切
  • 大人から強制された社会性ではなく、自分の中で社会性を育む
  • 家事に参加できるようにし、「家族の一員」という気持ちを育むなどで家庭でも社会性を育むことができる

モンテッソーリ教育の目的は、Aid to Life(生きることを助けること)です。尊重されて育ったこどもは、自己実現だけではなく、他者貢献についてもベクトルが向いていきます。「困っている人に対して私は何ができるのか」「どうすれば未来がより良くなるのか」。このような他社貢献や社会貢献を自然と考えられるようになっていきます。そのため、モンテッソーリ教育は平和教育とも呼ばれているのです。マリア・モンテッソーリの墓石には以下の言葉が刻まれています。

「愛する全能の子どもたちよ。人類と世界が平和になるよう手伝ってください」

本当の社会性を身につけるため、まずはこどもを観察し、尊重することから始めてみましょう。

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この記事を書いた人
本間綾
本間綾
ライター

出版社勤務を経て、出産を機にフリーランスに。育児書や児童書、Webメディアなど、ママパパ向けの媒体での執筆がメイン。7歳と11歳の娘の母。

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