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【北欧インタビュー】第1回「こどものありのままの姿を尊重したい」スウェーデン在住教育者、岩生明子さんにインタビュー

公開日:

モンテッソーリペアレンツファウンダーであるモンテッソーリ教師あきえが、「こどもが尊重された社会」を視察するべく実現した、3週間の北欧滞在。本シリーズでは、スウェーデンとフィンランド2カ国の滞在中に行った、教育関係者の方々へのインタビューを全3回にわたりお届けします。

第1回目の今回は、スウェーデン在住の教育者、岩生明子さんのお話です。明子さんは、日本で保育士として働いたのち、海外の教育を学ぶため渡米。その後、アメリカで出会ったご主人とスウェーデンに移住しました。スウェーデンでは、モンテッソーリ保育園勤務などを経て、現在、現地の大学で保育を学んでいます。

明子さんの目に、スウェーデンの教育はどのように映るのでしょうか。これまでのご経歴についてもじっくり伺いました。

岩生明子
プロフィール
岩生明子さん

保育士、教育者
現在は大学に通ってスウェーデンの保育士の教育課程を学んでいる
愛知県出身、スウェーデン在住
お子さん4歳

プロフィール
モンテッソーリ教師あきえさん

国際モンテッソーリ教師、保育士
「こどもが尊重される社会をつくる」ことをビジョンに、子育てのためのオンラインスクール「モンテッソーリペアレンツ」ファウンダー、ベビーブランド「mu ne me」運営、オンラインコミュニティ「Park」運営を行う。
プライベートでは二児の母(7歳,1歳)

「こどもの権利が守られていない」と涙した、日本の保育現場での経験

あきえ:明子さんは以前日本で保育士として働いていたいうことですが、なぜ保育士を志したのですか?

明子:正直なところ、昔から「保育士になりたい」と願っていたわけではありませんでした。商業高校へ進み、将来の夢も持たぬまま迎えた進路選択の時期。就職ではなく進学を選び、オープンキャンパスへ行く中で保育系大学を見つけたのが最初のきっかけです。「こどものお世話をしたり身体を動かすのは好き」という理由から、短大で保育を学ぶことにしました。

あきえ:その後、複数園を持つ日本の私立保育園に就職されたんですよね。実際に保育現場に入って感じたことや、直面した課題はありましたか?

明子:保育士になった私が最も大切にしていたのは、こどもたちのありのままの姿です。こどもの目線に立ち、一緒に思いきり遊びたい!その思いだけでした。

しかし保育現場に入って目の当たりにしたのは、運動会をはじめ、こどものありのままの姿が尊重されない数々の行事が行われる現実でした。「こどもたちのふだんの姿を保護者の方々に見せたい」という私の思いとは裏腹に、実際はこどもたちの遊び時間を削ってまで、結果のために行事練習や準備に時間が割かれます。守られるべきこどもが守られていないと、悔しさに涙を流しました。

あきえ:行事そのものに反対しているわけではなく、行事内容や行われ方に問題を感じられたということですね。

明子:はい。現場教師の声に対する上司の対応なども含め、こうした行事は、大人が大人のために行っているものなのではないかと気が付き絶望しました。私の情熱はここでは発揮できないと感じましたね。

あきえ:「大人主体の保育」という課題に対し、明子さんはその後どのような行動を取られたのですか?

明子:他の保育園へ職場を移したりもしましたが、そうした現実や私の思いは変わりませんでした。しかし、「似たような環境に身を置く限り、私は経験値のない先生にとどまってしまう」「もっと学びたい」と考え始めたその時、ふとテレビでデンマークの教育特集を目にしたんです。

もともと海外が好きだったということ、また英語を学びたかったということもあり、その番組をきっかけに、海外で保育を学ぶという選択肢が頭に浮かぶように。調べていく中で見つけた、アメリカのオペア制度※に挑戦することにしました。住み込みとあり、これなら心配性な母にも応援してもらえるのではと思ったんです。

※海外家庭にホームステイをしながら、チャイルドケアやシッターをするというプログラム。

こども一人ひとりの意思が大切にされる、スウェーデンの少人数保育

あきえ:アメリカからスウェーデンに移ったきっかけや、スウェーデンのモンテッソーリ保育園で働くことになった経緯を教えてもらえますか?

明子:シッターとして働いていたアメリカで夫と出会い、彼の仕事の関係でスウェーデンに移住しました。こちらに来て1年ほどはスウェーデン語を学びましたが、やはり働きたいという思いが湧き、近所の幼稚園や保育園のドアを叩いては履歴書を配りました。モンテッソーリ教育に特別強い関心があったわけではないのですが、履歴書を配った園のひとつにモンテッソーリ園があり、ご縁あってそちらで働くことになったんです。

あきえ:スウェーデンのモンテッソーリ保育園で働き、日本の保育現場との違いなど、どんなことを感じられましたか?

明子:まず気が付いたのは教室の広さです。こどもひとりあたりの空間が広く、心に余裕を感じました。また、各活動のスペースが確保されているため、こどもがその時に興味のあることをそれぞれに楽しめるというのも印象的でした。

先生の人数の多さも大きな違いですね。スウェーデン政府は少人数保育を推奨しており、保育園ではこども6人に対しひとりの先生が付きます。私がいた2.5歳〜6歳の異年齢クラスでは、33人のこどもに対し7人の先生が配置されていました。

あきえ:日本では、考えられないくらい手厚い配置ですよね。

明子:そうですね。スペシャルニーズがあるこどもに限らず、こどもの発達や性格はさまざま。そのニーズに対応するためにも、大人の手や目の数は必要だと納得しました。チームでこどもたちを見ることで、日本のように誰かひとりが全責任を負うということにもなりません。

あきえ:明子さんが日本の保育現場で課題を感じた学校行事に関してはどうでしたか?

明子:スウェーデンでは、「保護者に見せるため」の行事はありません。クリスマスのお祝いなどはありますが、こどもたちが5分ほど歌を歌う程度です。行事に向けた活動もありますが、そのために大きく時間を割くということはないですし、こどもがやりたくないのであれば、その意思を受け入れてもらえる環境があります。

モンテッソーリ教育の自己選択を大切にする考えやスウェーデンの少人数保育は、私が大切にしたい教育につながるものがあるなと、もっと学びたいと思いましたね。

スウェーデンの教育とモンテッソーリ教育に共通する「人はみな平等」というマインド

あきえ:現在、スウェーデンの大学で保育を学ばれているということですが、そこにはどんな思いがあったのでしょうか。

明子:私はスウェーデンの保育士資格を持っていないので、勤めていた園ではアシスタントという役職でした。しかし仕事をする中で、(責任などの面から)保育士とアシスタントの間に垣根を感じるように。短期だったアメリカ滞在とは異なり、スウェーデンは長く暮らす場所という感覚もあり、ここできちんと責任のある仕事をしたいという思ったんです。ただ経験を積むのではなく、知識や学位を得て何かを成し遂げたい。今ここで学ばなければ!と思いました。

あきえ:モンテッソーリ園での経験を経た今、明子さんが大切に考える教育とはどんなものですか?

明子:日本での保育士時代を含め、モンテッソーリ園で働くまでは「こどもは自分が育ててあげる、お世話してあげるものだ」と思っていました。

しかしモンテッソーリ教育を知り、「環境さえあれば、こどもは自ら育つ力がある」ことを学びました。こどもを対等な存在と捉えるようになり、おのずとかかわりも変化していきましたね。今は、こどもを観察し、こどもにとって適切なタイミングでかかわることを大切にしています。

スウェーデンでは忠実に民主主義が実行されていますし、社会に多様性があり「人はみな平等」という考えが教育方針として謳われています。それはモンテッソーリのマインドと重なる部分ですね。

あきえ:スウェーデンとモンテッソーリの考え方双方が、明子さんご自身や育児に影響を与えているのですね。最後に、明子さんのこれからの目標を教えてもらえますか?

明子自分の保育園を作ることです!自分が信じる教育を、仲間と共に実践していきたい。そしてそれを教育者に伝えていける人になりたいです。それこそが、ダイレクトにこどもに影響を与えることにつながっていきますからね。

日本、アメリカ、スウェーデンという地でこどもたちにかかわってきたからこそ言えるのは、どの場所、どの文化で生まれても、こどもはこどもだということ。こどもたちは全力で成長していて、私たちはそれを近くで見守っている存在です。

母として、教育者として、自分をアップデートしていけるこの日々が面白く幸せですし、楽しい人生を生きているなと感謝しています。

まとめ

あきえ

今回、明子さんの教育者としてのこれまでのストーリーを伺い、とても熱いエネルギーを感じる時間でした!目の前のお子さん、そして全てのこどもの真の幸せを願う明子さんの思いに私もパワーをもらいました。教育者としてのやりがいと誇り。そしてアップデートし続ける明子さんの志をみなさんも感じられたのではないでしょうか。

北欧インタビューシリーズ第1回目の今回は、スウェーデンで教育者として成長し続ける岩生明子さんのお話をお届けしました。

ご自身の夢に向かって走り続ける、どこまでも主体的で前向きな明子さん。日本の保育現場、そしてスウェーデンのモンテッソーリ保育園を経験された明子さんだからこその視点に、多くの気付きをいただけるインタビューとなりました。次回はスウェーデンのモンテッソーリ園でのインタビューをお届けします。どうぞお楽しみに!

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この記事を書いた人
Mariko Dedap
ライター / 保育士 / 中高美術教諭

フランス在住ライター。教育、語学、旅、文化などについて執筆。日英翻訳も行う。大学卒業後渡英、ロンドンでライター活動を開始。その後日本で英会話講師や編集業を経たのち、インターナショナルスクールで5年間幼児教育に携わる。現在は、フランス南西の街トゥールーズで、日本にルーツを持つ幼児たちに日本語教育も行っている。

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