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キッチン・はさみ・道路…叱らずに伝える、危ないことから命を守るかかわり方


杉浦あきえ(モンテッソーリ教師あきえ)
国際モンテッソーリ教師、幼稚園教諭、保育士
「こどもが尊重される社会をつくる」ことをビジョンに、子育てのためのオンラインスクール「モンテッソーリペアレンツ」ファウンダー、ベビーブランド「mu ne me」運営、オンラインコミュニティ「Park」運営を行う。
プライベートでは二児の母(9歳,4歳)
包丁やはさみ、道路への飛び出し。こどもの危ない行動を目の前にすると、とっさに大きな声が出てしまうこともありますよね。
叱らずに伝えたいと思っていても、命にかかわる場面では、まず止めなければいけません。今回は、危ないことの止め方と、そのあとにこどもへ何を伝えるかについてお話しします。
危ないときは、声かけより先に身体で止める

危ないことを止めるときは、どう声をかけるか以前に、身体で制止することが一番重要になります。
距離が離れていたら声をかけるしかないこともありますが、遠くから『危ないよ』と言うより、とにかく『ちょっと待って』『それはやめようね』と、身体を使って行動を止めることが大事です。
例えば、こどもがいきなりキッチンに入って、包丁を出していたとします。そこで『それは包丁っていってね……』と長く説明するより、まず持っている包丁を受け取り、『これは包丁だから、ちょうだいね』と止めます。
その上で、『これは包丁。危ないです』『手が切れちゃうから、お母さんと一緒に使います』と、短く、わかりやすく伝えていきます。
こんこんと言い聞かせても、こどもには、何かを言われている怖さだけが残ってしまうことがあります。まず身体で止めて、そのあとに短い言葉で端的に伝える。これが基本です。
怒る必要はなくても、真剣である必要はある
怖い顔で怒ったり、大きな声で一喝したほうが、こどもに響くのではないか。次からしなくなるのではないか。そう思うこともありますよね。
でも、大事なのは、こどもが何がいけなかったのかをわかることと、今後どうすればいいかを知ることです。
私たちがびっくりしたり、イライラしたりして、その感情をぶつけることと、真剣に伝えることは違います。怒ったり叱ったりする必要はないんだけれど、真剣である必要はあるんですよね。
大好きで信頼している人に怖い言い方をされて、こどもの気持ちがその印象だけでいっぱいになってしまうと、そのあとにどんないいことを言っても、入っていきません。
『さっき何があったの?』と聞かれても、『怒られちゃった』で終わってしまう。それでは、何が危なかったのかが伝わらないんですよね。
『しないよ』だけでなく、どうしてほしいかまで

『危ないから触らないよ』と伝えることは必要です。でも、『何々しないよ』だけで終わると、じゃあどうすればいいのか、こどもにはわからないことがあります。
『あなたが使っていいはさみは、あそこにあるから、このはさみだったらどうぞ』
『道路に行くときは、必ず手をつなぎます』
あれはダメ、これはダメと、否定形だけで終わらず、やってほしいことを肯定形で具体的に伝える。それを真剣に言うことが重要かなと思います。
『これは必ずお母さんがいるときに触ってね』『あなたが使っていいものは、こっちです』と、次の行動がわかるように伝えていきたいですね。
まずは、自由に過ごせても危険がない環境を

危ないものをすべて排除して暮らすのは難しいですが、命にかかわるような危険は、なるべく環境から取り除いておくことが大前提です。
『これをやったら、こうなってしまうだろうな』と予測できるものは、なるべく排除する。今の発達段階のこどもが自由に過ごしていても、危険がない状態をつくることは、もちろん大事です。
とはいえ、発達が早くて、『もうそれもできるようになったの?』『もうそこに届くようになったんだ』と驚くこともありますよね。
ヒヤッとすることがあったら、今後はそうならないように環境を変える。その上で、こどもにも、これからどうしていくのかを具体的に伝えていく必要があります。
心配しやすい人も、あまり気にならない人も
危ないことが気になる程度は、人によって違います。
リスクに対して『ここが心配だな』と思ってくれる人がいることで、いい塩梅で過ごせることもあります。どちらがいい、悪いではなく、自分がどういうタイプかを自覚することが大切かなと思います。
一方で、心配が強いと、口出しや手出しが多くなりがちです。まず、そもそも言わなくてもいい環境をつくる。その上で、安全に見守れる小さな心配であれば、口を出さずに見守ることも必要になります。
何が心配なのか、何に対して不安なのかを、自分の中で明確にして対策することも重要です。
みなさんの『これって大丈夫?』にお答えします
Q. 『危ないよ』と言うほど、面白がって繰り返すときは?
あきえこどもが、どこにニーズを持っているかにもよります。反応してもらえることがうれしいのか、やめるきっかけがつくれなかったのか。いろいろあると思うんですね。
今すぐ止めなければいけないほど危険な場合は、声かけを考えるより、まず身体で制止します。
でも、安全に見守れる場合は、『何やってるの?』と興味を持って聞いて、『そっか、それをやっているんだね。これだと心配だから、こういうやり方に変えてみない?』と、アプローチを変えるのも一つです。
大人の反応そのものが楽しくて繰り返している場合は、シンプルに『それはやらないよ』と伝えて、それ以上反応しすぎず、やめたときに一緒にかかわっていく対応もあります。安全が確保できる場面かどうかを、まず考えたいですね。
Q. こどもが怖がるような危険も、伝えていいのでしょうか?



事実としてあるリスクは、伝えて大丈夫です。ただ、必要以上に盛る必要はありません。
車が走っている道路に出たら、車とぶつかることがある。病院に行かなければいけなくなったり、命にかかわったりすることもある。そうしたことを、伝えなければいけない場面もあります。
必要以上に怖がらせなくていいけれど、事実としてリスクがある場合は伝える。ただ、あれもこれも言いすぎて、こどもが何に対しても不安になるのは窮屈ですよね。ここぞというときに、その子の発達段階に合わせて伝えていくことは必要かなと思います。
最後に
私も、ヒヤッとしたことは何度もあります。長女ではあまりなかったのですが、次女では毎日ヒヤヒヤするくらい。心配な方の気持ちも、とてもわかります。
命にかかわる危険は、まず止める。そのあとに、何が危なかったのか、どうすればいいのかを、短く、真剣に伝える。日々のかかわりの参考にしていただけたらうれしいです。
この記事の内容は動画でも解説しています。ぜひご覧ください。






