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「あと5分」の約束が守れないのはなぜ?帰りたくないと泣くこどもへのかかわり方


杉浦あきえ(モンテッソーリ教師あきえ)
国際モンテッソーリ教師、幼稚園教諭、保育士
「こどもが尊重される社会をつくる」ことをビジョンに、子育てのためのオンラインスクール「モンテッソーリペアレンツ」ファウンダー、ベビーブランド「mu ne me」運営、オンラインコミュニティ「Park」運営を行う。
プライベートでは二児の母(9歳,4歳)
公園や園のお迎えで、「あと5分ね」と約束したのに、その時間になると「まだ遊びたい!」「帰りたくない!」と泣いてしまう。そんな場面はありませんか。
大人としては、約束した時間になったら、次の行動に移ってほしいですよね。でも、こどもにとっては、わかっていても難しいことがあります。
今回の記事では、こどもが気持ちを切り替えることの難しさと、帰りたくないときに大人ができるかかわりについてお伝えします。
気持ちの切り替えは、大人が思う以上に難しい

こどもは、まだ脳が成熟していなくて、今も成熟に向かっているところです。自分の欲求や、考えていること、行動、感情を制御していくのは、未熟な脳でやるにはすごく難しいんですよね。
大人でも、あとちょっとしか携帯を見ちゃいけないのに、気づいたらずっと見ていた、ということがあると思います。
何かを切り替えるということは、一回やっていることをやめて、かつ、新しい方向に注意を向けるということです。実は、私たち大人が思っている以上に、高度なことなんですよね。
それをまだ未熟な脳の状態でやっているので、できなくてもごくごく自然なことかなと思います。
「わかる」と「できる」の間には、大きな川がある

1. 約束がわかっていても、できないことがある
「お約束、何だった?」と聞けば、「おしまいだった」と答えられる。わかっていないわけじゃないんですよね。
でも、「わかる」と「できる」の間には、大きな川が流れています。
私たちも、こどもにイライラをぶつけちゃいけないとわかっていても、「いつ何時もできますか」と言われると、できないときもあるじゃないですか。それぐらい、わかるとできるの間にはギャップがあるんですよね。
こどもも、大人が言っていることはわかるし、それが約束だということもわかっている。でも、自分を制御して、そこまで自分を動かしていく「実行機能」は、今まさに育んでいる最中です。
守りたくないわけじゃなくて、むしろ守ろうと思っているんだけれども、そこまで自分を持っていけない、ということがあります。
2. 「わかった」が、本当の合意になっていないことも
もう一つは、わかってはいるけれど、あまり初めからその気はなかった、ということもあると思うんですね。
「わかった? お約束よ」「わかったね?」と言われたから、「わかった」とオウム返ししただけで、本当に「そうしよう」と意識するところには至っていないこともあります。
今から遊ぼうというときに約束すると、こどもはもう遊びに行きたい。「わかった」と言って、すぐに遊びに行く、ということもありますよね。
だから、そこの合意形成がちょっと足りなかったという場合もあるし、そもそもの発達段階として、守れなくてもごくごく自然な段階ではあります。
遊ぶ前の約束と、帰るまでの余白を

1. 遊具が見える前に、目を見て話す
目の前に遊ぶものがあるときに話しても、こどもの気持ちはもうそちらに向いています。何を言われても「わかった、わかった」となって、実はあまり理解していない、ということもあります。
公園だったら、遊び出そうとしているときよりも、公園の中に入る前や、遊具が見える前に話します。
「今日は遊んだあとに、『帰るよ』ってお母さんが伝えたら、お片付けしようね」
数字や時計がわかるお子さんだったら、「長い針が6で帰るからね。お母さんは5で伝えるよ」と言えますし、まだわからないお子さんには、その子にわかりやすく伝えておきます。
目を見てお話ししないと、なかなか入っていかないので、目を見て話をしていくことはできるかなと思います。
2. 本当に帰らなきゃいけない時間より、早めに約束する
大人側としても、本当に帰らなきゃいけない時間より、10分前をこどもとの約束の時間にしておく。
本当にここを出なくちゃいけないのが30分なのであれば、こどもにも30分と伝えてしまうと、余白がありません。
こどもの発達段階に合わせて、10分や15分といった余白を設けておきたいです。私たちの中で調節できる余白を常に持っておくのは、結構大事です。
3. 終わりの直前に、タイミングよく誘う
その上で、リマインドですね。
「これが終わったら、そろそろおしまいにしようね。そうしたらお家に行くよ」
ずっと言って回るというより、直前にリマインドをして、終わったときに「じゃあ、お片付けしようね」と誘います。
滑り台を滑り終わったときに「はい、じゃあ行こうか」と、タイミングよく誘っていくこともできるかなと思います。
「帰るよ」と言うなら、大人も帰る方向へ

「置いていくよ」「ついてこないなら、本当に置いていくからね」といった脅しは避けたいですし、嘘も避けたいですね。そこは大前提です。
ただ、私たちがずっとこどもについて回っていると、「とはいえ、親も別に帰る気はないんだな」という雰囲気が出てきてしまいます。
「帰るよ」と言うなら、大人も荷物を持つ。もちろん安全な範囲内で、出口の方向に体を移動させる。公園でも、ずっと遊具のそばで待っているのではなく、「お母さんはあっちのベンチのほうに歩いていくからね」と伝える。
嘘もつかないし、脅しもしない。置いていくこともしないけれど、帰る方向へ、私たちの体と気持ちを向けていく。 それが結構大事なんですよ。
「帰るよ、帰るよ」と言いながらずっとついていると、「ずっとついてきてくれるの?」となってしまうので、大人も帰る方向へ気持ちと体を向けていくことが、まず大事かなと思います。
泣いてしまって、もう時間がないときは

1. 気持ちを受け止め、帰る理由を伝える
それでも泣いている場合は、「遊びたかったんだよね」「これ、大好きだもんね」と、まず受け止めます。
「でも、また遊べるよ」「またいついつ来ようね」と、次にできることも伝えていきます。
ただ、帰らなきゃいけないものは帰らなきゃいけないので、「もう暗くなってきたから」「ご飯を作るから」と、帰る理由もお伝えします。
2. 一言伝えた上で、抱っこして帰っても大丈夫
その場合は、抱っこしてしまって大丈夫です。
ただ、無言で抱きかかえるのではなく、こどもに一言伝えてあげたいですね。
「もう抱っこさせてもらうね」
「歩けなさそうだから、抱っこするよ」
一言伝えた上で抱きかかえて、泣いているかもしれないけれど、ひとまず車や自転車などで帰っていく。場面が変わることで、こどもの気持ちも切り替わることがあります。
3. 帰ったあとの楽しみを見いだす
あとは、楽しみを見いだしてあげることです。
「やめる」というのは、すごく大変です。なので、やめるだけではなくて、
「お家に帰って、この前楽しみにしていたことを一緒にやろうよ」
「帰ったら、すごく見せたいものがあるんだ。一緒にやりたいことがあるんだ」
何か楽しみを見いだして、「それがやりたいから帰る」というふうに気持ちを移していくのも、一つかなと思います。
みなさんの「これって大丈夫?」にお答えします
Q. 大人によって対応が違うと、こどもの気持ちの切り替えに影響しますか?
あきえ可能であれば、一貫しているほうが、こどもにとってはもちろんいいですよね。
脅されて動くのではなく、「帰らなくちゃいけない、でも帰りたくない」という葛藤に寄り添ってもらいながら、帰ることに折り合いをつけていく。その経験のほうが、はるかにいいので、それをどの大人もやってくれるなら、こどもにとってプラスです。
ただ、一回脅したからすごく傷つくかというと、そこまでインパクトが大きいことではなく、周りに寄り添って向き合ってくれる人がいれば、こどもも「この人との関係性の中ではこう」と区別していくかなと思います。
でも、これは大人の問題で、こどものことじゃないんですよね。
パートナーの間で対応が違うと、強い言い方のほうがこどもを動かしやすいんです。「もう置いていくよ」「二度と来ないからね」と言えば、こどもは嫌だと思って動くので、かかわりとしては簡単です。
でも、そればかりではダメだからと、もう片方の人がその言葉を使わずに、こどもに納得してもらって、共に行動していこうとする。すごく忍耐力のいることをしているわけですよね。
強い言葉でこどもを動かしている側は、それを使わずに忍耐を持ってかかわってくれている人の努力があって、それが叶っていることを自覚してほしい。 個人的には、そう思います。
大人全員が脅すようになったら、こどもはしんどい。そうならないように、支えている人がいる。そのことは自覚する必要があるかなと思います。
最後に
約束がわかっていても、すぐにその通りにできるわけではありません。「わかる」と「できる」の間には、大きな川があります。
その難しさを知った上で、事前に目を見て話し、帰るまでの余白を持つ。帰るときには、こどもの気持ちを受け止めながら、大人も帰る方向へ気持ちと体を向けていく。
帰りたくないと泣くこどもへのかかわりの中で、試していただけたらと思います。
この記事の内容は動画でも解説しています。ぜひご覧ください。






